込江保次税理士事務所■横浜市栄区・JR大船駅

2006年04月の記事

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2006年4月21日(金) 13:50

シリーズ新会社法□具体例2〜現行の株式会社の場合その他

今度は現行の株式会社は会社法の施行に対して何かしなければならないことがあるのかですが、結論から言いますと現状のままで良いのであれば特別に何かしなければならない手続きはありません。
ただし、この機会に会社の信用度を高めるために取締役会や会計参与を設置するなど、機関の見直しをされる場合には登記などの手続きが必要となります。

逆に今までは取締役3名以上、監査役1名以上を求められていて負担だった場合など経営形態を簡素化したいとお考えであれば、現行の有限会社のように取締役1名だけの機関に直すことも可能です。その他にも株券発行や株主総会の運営など中小企業にはあまり必要が無いと思われる規定もご自身で適用するかどうかの判断をすることができるようになりましたので、この機会に本当に必要な形に改めてより本業に専念ができて利益を得られる体質作りに転換を図ると言うのも良いのではないでしょうか?

またこれまでは最低資本金制度の敷居が高くて法人になりたくてもできなかった個人事業主や新規の開業を考えられていた方にとっては、渡りに船の実に良い法律ではないでしょうか。
更には類似商号や保管証明などもなくなりましたので、株式会社を設立するための手続きは随分と簡単になりました。当面必要な程度の現金にお手持ちの車やコンピュータなど業務に必要な資産を現物出資しての設立でも、現物出資の証明書は無用になり簡単です。

しかしやはり新規に株式会社を設立するわけですので、商号や目的・決算期その他決めなければならないことはいろいろあるのは変わりません。結局はどのような会社経営をしたいのか、そのためにどのような機関を置いて定款には何を定めるのかを決めることから始まるのです。しかし今までと異なり選択の幅が広がったために、逆にこれまでの実績やしがらみなどが無い分だけかえって決めるのが大変になるのかも知れません。


【おわりに】

全979条に及ぶ長大な新しい法令を強引にたったこれだけの分量にまとめてしまいましたので、多々至らぬ部分や不足する内容がございますことをご了承ください。
それでもこの先会社経営をされます上で付き合っていくことになる「会社法」につきまして、少しでもご理解をいただくお手伝いとなれましたならば幸いです。

他にも関連法令の改正や「中小企業の会計に関する指針」の創設なども行われ、単に専門分野を追求するだけでは会社を存続させることも大変なほどに中小企業を取り巻く環境は厳しくなっていることを痛感せざるを得ません。
そのような中で中小企業の経営者の方に経営全般についての情報の提供なども含めたお手伝いができればと思い、これからも当サイトにて随時さまざまなコンテンツを増やしていきますのでよろしくお願いいたします。

最後になりましたけれども、当シリーズでは登記や定款に関することを中心に全般に渡りご多忙の中をお世話になっております司法書士の先生に監修をいただきましたことをこの場をお借りして感謝いたします。
会社法の施行に際しまして、現行の有限会社から株式会社への移行をお考えの会社は勿論、特例有限会社として存続をされる場合や現行の株式会社におかれましても機関や定款による自治の見直しをお考えであれば、上記の司法書士の先生と共同でワンストップサービスの形態にてご相談を伺うことによる対応もさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

ご拝読ありがとうございました。お読みになられましてお気づきの点などがございましたならば、ブログへのコメント又は込江宛メール[info@komie.com]にてご連絡をいただければ幸いです。

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2006年4月20日(木) 08:54

シリーズ新会社法□具体例1〜現行の有限会社の場合

ここまでは会社法についての説明でしたが、それでは現行の有限会社は会社法が施行された後には具体的にどうすれば良いのでしょうか?
大きく分けると「特例有限会社」として有限会社の商号のまま存続する方法と、「株式会社」に商号を変更する方法があります。

特例有限会社の場合には、現行の有限会社のままですので基本的には何も変わりがありません。即ち、以下のような利点が考えられます。
商号変更登記が不要
登録免許税6万円を含めて登記関係費用が不要なのは勿論ですけれども、商号(会社名)が変われば名刺や印鑑、名入り封筒や広告看板なども新しくしなければなりませんので、その手間と経費の負担は案外大きいものですし、登記事項の変更をすれば税務署などの課税庁に対しての届出も必要になります
役員の任期は無期限
株式会社になれば最長に定めたとしても10年に一度は役員変更の登記を行わなければなりません。これに要する登記関係費用は登録免許税1万円を含めて3〜4万円程度ですけれども、それほど間が空くと任期満了自体を忘れてしまう可能性があり、実務的にはそちらの方が心配かもしれません
決算公告が不要
官報掲載の場合では最低でも約3万円、ホームページによる電子公告では5年間の継続公開など、本来必要でないことに対して負担をしなければならないのは楽しいことではないようです
ただし特例有限会社として存続をした場合でも、定款に「利益配当」「残余財産分配」「議決権行使について出資口数に応じない定め」「制限に関する定め」などの定めがあり、これらについて他の出資持分と差別化した持分があるときは、会社法の施行日から6ヶ月以内(平成18年10月31日まで、それ以前に他の登記をするときはその登記と同時)に会社法の規定による種類株式の登記をしなければなりません。
また、現行の確認有限会社は、「設立5年以内に最低資本金である300万円に資本の総額が達しなかった場合に解散する」などという「解散の事由」を定款及び謄本より削除する必要がありますので、変更登記を行う必要があります。

逆に会計参与を設置するなど会社法の適用を受けたい場合には、商号を株式会社とする定款変更決議を行い所定の登記をすることにより株式会社へ移行しなければなりません。この登記に必要な登録免許税は、現行の有限会社を組織変更により株式会社を設立する場合と同様に最低6万円です。

今までのことを踏まえまして、それでは現行の有限会社のまま「特例有限会社」として存続させるのか、それとも株式会社に商号変更をするのか、どのような理由で判断をすればよいのかいくつか例を並べてみますのでご参考にしてください。
株式会社と言うイメージ戦略
インターネットで通信販売をする場合などには、やはり会社名として「××商事株式会社」と書いてある方が良い悪いは別として信頼度が高いように感じられる傾向にあるようですので、会社法施行に合わせて商号変更と言うのは売上げ拡大の好機となるかも知れません
信用度をアップ!
取締役会、監査役、会計参与を設置して、取引先や銀行などに対しての信用度を高めるために会社法の規定を適用できる株式会社に組織変更をすることは考えられます
M&Aなどの可能性
特例有限会社では株式交換や株式移転ができなかったり、合併存続会社や分割継承法人になれませんので、このようなことをお考えであるならば株式会社に組織変更をする必要があります
手間とお金を掛けたくない
商号変更の登記費用や名刺、看板等の変更などの一時的な経費の他に、最長でも10年に1度の役員変更登記など、株式会社に組織変更をしますと手間とお金が掛かります。それを避けるために現状のまま特例有限会社として存続する、と言うのは立派な選択肢だと思います
ちなみに旧有限会社刻印の代表印(実印)を株式会社に商号変更した後もそのまま代表印として登録することはできます
決算公告をしたくない
官報に公告を出せば経費が掛かるし、ホームページではお金は掛からないけれども要旨ではなく貸借対照表のすべてを5年間も公開しなければならないので何だか経営状態や自らの財布の中身を晒すようで決算公告をしたくないと言うことであれば、特例有限会社として存続するのも一法だと思います
有限会社が好き
会社法の施工後も商号に有限会社と入っていれば、それは以前から存続している会社であることがわかりますので年数が経つほどに実績のある会社であるとの証明になるかも知れません。又他と一緒は嫌だと言う場合にも逆に目立つことになりそうですので、その場合は現行の有限会社のまま存続するのが良いでしょう

会社法が施行されたからと言って株式会社に組織変更をするのか、それとも現行のまま特例有限会社として存続するのか、慌ててどちらかを決めなければならないわけではありません。ですから当面は現行のままとして周囲の状況なども見ながら、組織変更をする理由があるかどうかゆっくりとお考えになってみてください。

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2006年4月19日(水) 12:05

シリーズ新会社法□LLCとLLP

会社法ではこれまで説明をしてきました株式会社と言う組織形態以外に、新たに合同会社(LLC:Limited Liability Company)と有限責任事業組合(LLP:Limited Liability Partnership)が創設されます。

LLCは、米国LLCを参考として作られたものですけれども、日本版は「法人格」を持つ組織であるために法人税課税が行われることが特徴です。それに対しましてLLPは「組合」であるために法人税課税はされずパススルー課税と呼ばれる組合構成員課税となります。
組合構成員課税とは、組織で得た利益をその契約による割合に応じて各構成員に分配し、各構成員はそれぞれ所得税の確定申告を行うことになります。ですからLLPとして損失が生じた場合には、その構成員に給与所得などがあるならばその所得と通算(合算)をしますのでこの場合には所得税額が抑えられることになります。

利益の分配に関しましては、株式会社ではその出資の割合に応じて分配されるのに対して、LLC及びLLPでは共に出資の割合とは関係なく出資者間で自由に決めることができる点も特徴です。

このように似た特徴を有するLLCとLLPですけれども、LLCは合同会社ですのでこの会社法に規定されている組織ですが、LLPは会社ではなくて法人格を持たない組合であるために正しくは昨年5月6日に施行されました有限責任事業組合契約に関する法律により規定されておりますのでご注意ください。

これらも含めまして、LLC(合同会社)とLLP(有限責任事業組合)の主な特徴などを表にまとめてみます。
  LLC(合同会社) LLP(有限責任事業組合)
法人格 あり なし
出資者の責任範囲 有限責任 有限責任
業務執行機関 各社員。社員が複数ある場合は社員の過半数又は業務執行委員 各組合員。重要な財産の処分、譲り受け、多額の借財については組合員の同意
利益処分割合 定款規定により自由 組合契約により自由
出資者が1人となった場合 存続可能 存続不可能
組織変更 他の種類の会社への組織変更可能 会社への組織変更は不可能
組織再編 株式会社との間で合併等の組織再編行為が可能 組織再編行為は不可能
課税方法 合同会社に対して法人税課税 組合員に対して課税
ただし、組合で生じた損失の組合員への取り込みに一定の制限あり


結局のところLLCとLLPのどちらかを設立したいという場合に、その判断となるのは「法人格」の有無ではないでしょうか。
即ち組織として事務所を借りたり、お金を借りたり、契約をしたりする必要がある場合には、やはり「法人格」があることは契約をする上で必要になることが多いと思いますし便利でもありますので、そのような時にはLLC(合同会社)が有利でしょうし、労働力やノウハウなどの知的財産を集めて何かを行うような時は登記や決算などの負担が無いLLP(有限責任事業組合)が有利なのではないかと思います。

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2006年4月18日(火) 08:52

シリーズ新会社法□計算書類の改正他

会社法では計算書類と呼ばれている「貸借対照表」「損益計算書」「利益処分案」「営業報告書」についても改正が行われます。以下、改正が行われる内容について個々に説明をします。
貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」に変わります
「貸借対照表」において資本金の額などを表示していた「資本の部」が「純資産の部」となり、表示方法も以下のように変わります。
「純資産の部」記載例
1 株主資本
 1. 資本金
 2. 資本剰余金
  1) 資本準備金
  2) その他資本剰余金
 3. 利益剰余金
  1) 利益準備金
  2) その他利益剰余金
 4. 自己株式
2 評価・換算差額等
 1. その他有価証券評価差額金
 2. 繰延ヘッジ損益
 3. 土地再評価差額金
 4. 為替換算調整勘定
3 新株予約権
4 少数株主持分
利益処分案が「株主資本等変動計算書」に変わります
「利益処分案」が廃止されて期中の株式の増減や配当金の支払いなどを記載する「株主資本等変動計算書」を作成することになります。これまで利益の配当は決算期及び中間期の年2回しかできませんでしたけれども、会社法では回数に制限がなくなり株主総会の普通決議によりいつでも剰余金の配当を行うことができるようになるために、それに対応できる目的で「株主資本等変動計算書」に取って代わることになりました。
「個別注記表」の追加
今までは「貸借対照表」や「損益計算書」に記載をされていた注記事項ですが、「個別注記表」と言う別の計算書類により注記事項として12項目が定められたものが作られて、すべてをこちらにまとめて記載することになります。その中で会計監査人設置会社以外の非公開会社である中小会社は12項目のうち、「重要な会計方針に係る事項」「株主資本等変動計算書に関する注記」と「その他の注記」の3項目だけが必須となります。
「営業報告書」が「事業報告」に変わります
商法で使われていた「営業」と言う言葉が会社法では「事業」に置き換えられることから、これまでの「営業報告書」に変わって「事業報告」という書類になり、社外役員に関する事項や会計監査人に関する事項など新たな記載事項が増えております。またこの「事業報告」は計算書類から外れたために、会計監査の対象外となります。

これだけでも実務的には決算での作業負担は少なくないと思いますけれども、既に一部は今年度の税制改正として施行されておりますが、来年度以後も法人税法や消費税法などの関係税法においては会社法の施行に伴う改正が行われると思いますので、それらについても対応する必要があります。

例えば資本金の額により中小企業に該当した場合に適用を受けることができた法人税法の「交際費の1割加算」や「減価償却資産の即時償却」、消費税法の「新設法人の納税義務の免除の特例」などは最低資本金制度が撤廃されたことによってどうなるのでしょう?

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2006年4月17日(月) 09:16

シリーズ新会社法□定款自治の徹底

機関設計の他、株式譲渡の制限の有無、役員の任期や責任の範囲、株主総会の招集や議決権に関することなども、その会社自身で決めることができるようになると同時に、定款に記載することにより徹底させる必要があります

本当にいろいろな内容についてを決めることができますが、ここではやはり「大会社以外の非公開会社」に絞って実務上で関係が深いと思われる内容を取り上げてみます。参考までに関係条文を記載しましたので、ご興味があれば確認をしてみてください。
株式譲渡制限(第139条)
株式会社が発行する株式は原則として自由に譲渡することができますけれども、会社の買収などを避けて安定経営をするためなどに発行株式の全部又は一部を譲渡する場合に株主総会又は取締役会の承認を必要とする譲渡制限を設けることができます。
株券の発行(第214条)
会社法では原則として株券を発行をしなくて良いことになっていますが、定款で定めることにより発行することができます。ただし、株券を発行した場合にはそれに伴う事務手数や経費などが掛かるために、特別な理由がないのであれば原則通り発行をしない方が良いでしょう。
株主総会の招集通知期間(第299条)
非公開会社の場合は通常1週間前までと定められている株主総会の招集通知を、定款で定めることにより期間を短縮することができます。
株主総会の議決要件(第309条他)
株主総会により議決権の過半数により決議の割合も、定款で定めることによりその割合を変更することができます。
会計参与、監査役などの設置(第326条)
取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会は、定款に定めることにより設置することができます。
取締役の資格(第331条)
取締役には株主でなくてもなることはできますけれども、非公開会社においては定款で定めることにより株主以外の者は取締役になることができないとすることができます。
取締役、監査役、会計参与の任期(第332条他)
取締役及び会計参与の任期は2年、監査役は4年が原則ですけれども、定款で定めることによりいずれも最長10年までとすることができます。
取締役の業務執行(第348条)
取締役の業務執行の内容については、定款で定めることができます。
監査役の権限(第389条)
非公開会社は監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定するように、定款で定めることができます。
少数株主権の要件緩和(第433条他)
議決権の100分の3以上を有する株主は、株式会社の営業時間内であればいつでも会計帳簿などを閲覧する権利がありますが、この割合を下げることを定款で定めることができます。
公告方法(第939条)
日刊紙や電子公告(ホームページ)により公告を行う場合には、定款で定める必要があります。更に電子公告による場合には定款にそのURLも記載しなければなりませんし、公告期間も5年間継続して公開していなければなりません。

上記の内容はいずれもそれが記載された定款を株主総会で承認されることより初めて有効となりますので、その株主総会の議事録を作成して保管しておいてください。

また「特殊支配同族会社」に該当しますと、平成18年4月1日以後に開始する事業年度からは、業務主宰役員の役員報酬の内給与所得金額控除相当額は経費と認められないことになります。そうならないためには特殊支配同族会社に該当しないような議決権に関する定めを設けるなど、節税対策としてもこの機会にご検討されるのがよろしいかと思います。

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