会社法では計算書類と呼ばれている「貸借対照表」「損益計算書」「利益処分案」「営業報告書」についても改正が行われます。以下、改正が行われる内容について個々に説明をします。
- 貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」に変わります
- 「貸借対照表」において資本金の額などを表示していた「資本の部」が「純資産の部」となり、表示方法も以下のように変わります。
- 「純資産の部」記載例
- 1 株主資本
- 1. 資本金
- 2. 資本剰余金
- 1) 資本準備金
- 2) その他資本剰余金
- 3. 利益剰余金
- 1) 利益準備金
- 2) その他利益剰余金
- 4. 自己株式
- 2 評価・換算差額等
- 1. その他有価証券評価差額金
- 2. 繰延ヘッジ損益
- 3. 土地再評価差額金
- 4. 為替換算調整勘定
- 3 新株予約権
- 4 少数株主持分
- 利益処分案が「株主資本等変動計算書」に変わります
- 「利益処分案」が廃止されて期中の株式の増減や配当金の支払いなどを記載する「株主資本等変動計算書」を作成することになります。これまで利益の配当は決算期及び中間期の年2回しかできませんでしたけれども、会社法では回数に制限がなくなり株主総会の普通決議によりいつでも剰余金の配当を行うことができるようになるために、それに対応できる目的で「株主資本等変動計算書」に取って代わることになりました。
- 「個別注記表」の追加
- 今までは「貸借対照表」や「損益計算書」に記載をされていた注記事項ですが、「個別注記表」と言う別の計算書類により注記事項として12項目が定められたものが作られて、すべてをこちらにまとめて記載することになります。その中で会計監査人設置会社以外の非公開会社である中小会社は12項目のうち、「重要な会計方針に係る事項」「株主資本等変動計算書に関する注記」と「その他の注記」の3項目だけが必須となります。
- 「営業報告書」が「事業報告」に変わります
- 商法で使われていた「営業」と言う言葉が会社法では「事業」に置き換えられることから、これまでの「営業報告書」に変わって「事業報告」という書類になり、社外役員に関する事項や会計監査人に関する事項など新たな記載事項が増えております。またこの「事業報告」は計算書類から外れたために、会計監査の対象外となります。
これだけでも実務的には決算での作業負担は少なくないと思いますけれども、既に一部は今年度の税制改正として施行されておりますが、来年度以後も法人税法や消費税法などの関係税法においては会社法の施行に伴う改正が行われると思いますので、それらについても対応する必要があります。
例えば資本金の額により中小企業に該当した場合に適用を受けることができた法人税法の「交際費の1割加算」や「減価償却資産の即時償却」、消費税法の「新設法人の納税義務の免除の特例」などは最低資本金制度が撤廃されたことによってどうなるのでしょう?