込江保次税理士事務所■横浜市栄区・鎌倉市大船

2006年04月20日の記事

2006年4月20日(木) 08:54

シリーズ新会社法□具体例1〜現行の有限会社の場合

ここまでは会社法についての説明でしたが、それでは現行の有限会社は会社法が施行された後には具体的にどうすれば良いのでしょうか?
大きく分けると「特例有限会社」として有限会社の商号のまま存続する方法と、「株式会社」に商号を変更する方法があります。

特例有限会社の場合には、現行の有限会社のままですので基本的には何も変わりがありません。即ち、以下のような利点が考えられます。
商号変更登記が不要
登録免許税6万円を含めて登記関係費用が不要なのは勿論ですけれども、商号(会社名)が変われば名刺や印鑑、名入り封筒や広告看板なども新しくしなければなりませんので、その手間と経費の負担は案外大きいものですし、登記事項の変更をすれば税務署などの課税庁に対しての届出も必要になります
役員の任期は無期限
株式会社になれば最長に定めたとしても10年に一度は役員変更の登記を行わなければなりません。これに要する登記関係費用は登録免許税1万円を含めて3〜4万円程度ですけれども、それほど間が空くと任期満了自体を忘れてしまう可能性があり、実務的にはそちらの方が心配かもしれません
決算公告が不要
官報掲載の場合では最低でも約3万円、ホームページによる電子公告では5年間の継続公開など、本来必要でないことに対して負担をしなければならないのは楽しいことではないようです
ただし特例有限会社として存続をした場合でも、定款に「利益配当」「残余財産分配」「議決権行使について出資口数に応じない定め」「制限に関する定め」などの定めがあり、これらについて他の出資持分と差別化した持分があるときは、会社法の施行日から6ヶ月以内(平成18年10月31日まで、それ以前に他の登記をするときはその登記と同時)に会社法の規定による種類株式の登記をしなければなりません。
また、現行の確認有限会社は、「設立5年以内に最低資本金である300万円に資本の総額が達しなかった場合に解散する」などという「解散の事由」を定款及び謄本より削除する必要がありますので、変更登記を行う必要があります。

逆に会計参与を設置するなど会社法の適用を受けたい場合には、商号を株式会社とする定款変更決議を行い所定の登記をすることにより株式会社へ移行しなければなりません。この登記に必要な登録免許税は、現行の有限会社を組織変更により株式会社を設立する場合と同様に最低6万円です。

今までのことを踏まえまして、それでは現行の有限会社のまま「特例有限会社」として存続させるのか、それとも株式会社に商号変更をするのか、どのような理由で判断をすればよいのかいくつか例を並べてみますのでご参考にしてください。
株式会社と言うイメージ戦略
インターネットで通信販売をする場合などには、やはり会社名として「××商事株式会社」と書いてある方が良い悪いは別として信頼度が高いように感じられる傾向にあるようですので、会社法施行に合わせて商号変更と言うのは売上げ拡大の好機となるかも知れません
信用度をアップ!
取締役会、監査役、会計参与を設置して、取引先や銀行などに対しての信用度を高めるために会社法の規定を適用できる株式会社に組織変更をすることは考えられます
M&Aなどの可能性
特例有限会社では株式交換や株式移転ができなかったり、合併存続会社や分割継承法人になれませんので、このようなことをお考えであるならば株式会社に組織変更をする必要があります
手間とお金を掛けたくない
商号変更の登記費用や名刺、看板等の変更などの一時的な経費の他に、最長でも10年に1度の役員変更登記など、株式会社に組織変更をしますと手間とお金が掛かります。それを避けるために現状のまま特例有限会社として存続する、と言うのは立派な選択肢だと思います
ちなみに旧有限会社刻印の代表印(実印)を株式会社に商号変更した後もそのまま代表印として登録することはできます
決算公告をしたくない
官報に公告を出せば経費が掛かるし、ホームページではお金は掛からないけれども要旨ではなく貸借対照表のすべてを5年間も公開しなければならないので何だか経営状態や自らの財布の中身を晒すようで決算公告をしたくないと言うことであれば、特例有限会社として存続するのも一法だと思います
有限会社が好き
会社法の施工後も商号に有限会社と入っていれば、それは以前から存続している会社であることがわかりますので年数が経つほどに実績のある会社であるとの証明になるかも知れません。又他と一緒は嫌だと言う場合にも逆に目立つことになりそうですので、その場合は現行の有限会社のまま存続するのが良いでしょう

会社法が施行されたからと言って株式会社に組織変更をするのか、それとも現行のまま特例有限会社として存続するのか、慌ててどちらかを決めなければならないわけではありません。ですから当面は現行のままとして周囲の状況なども見ながら、組織変更をする理由があるかどうかゆっくりとお考えになってみてください。

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